01忘れる探偵と、疑われる青年

掟上今日子は、眠ると記憶を失う名探偵。講談社の単行本紹介では、事件をほぼ即日で解決する人物として案内されています。その今日子を頼ろうとするのが、隠館厄介(かくしだてやくすけ)という青年です。

厄介はさまざまな事件に巻き込まれ、常に犯人として疑われてしまうという境遇。疑いを向けられる側から、探偵を必要としています。一方の今日子には、忘れる前に事件を解くという条件がある。依頼する人の事情と、引き受ける探偵の事情が、両方ともはっきりしている組合せです。

この入口には、誰が犯人かという疑問に加えて、厄介の立場がどうなるのか、今日子が記憶を保っている間に解決へ進めるのかという関心も生まれます。疑われる人が探偵を呼ぶという状況が、人物と事件をつないでいます。

今日子のほぼ即日という解決の速さも、記憶の設定と並べると意味が見えてきそうです。時間をかけて調べ続ける探偵を思い浮かべると、この条件には独特の緊張があります。事件そのものの難しさに、探偵が使える時間への関心が重なるところを、導入からの読みどころとして挙げられます。

02映像研究所で、機密データが消える

文庫版の公式紹介で示される依頼は、映像研究所の機密データ盗難事件。研究者と事務員の厄介が疑われるものの、身体検査でもデータは見つからず、現場は密室という状況になっています。

盗難といえば持ち去られた物の行方が問題になりますが、この紹介では人を調べても発見できないこと、現場が密室であることまで提示されています。持ち物と場所の両方に条件があるため、どうやって消えたのかという疑問が具体的に立ち上がる入口です。

厄介は、ここでも事件の外から眺めている人ではなく、疑いを向けられる側にいます。探偵を呼びたいという人物紹介と、研究所での立場がつながる点も押さえたいところ。今日子という探偵の特徴だけでなく、その助けを必要とする人が見えることで、依頼が人物の問題としても感じられる設定となっています。

03西尾維新さんの作品を、今日子から知る

講談社の著者紹介によると、西尾維新さんは 2002 年、『クビキリサイクル』で第 23 回メフィスト賞を受賞してデビューしました。同作から始まる戯言シリーズのほか、『化物語』に始まる〈物語〉シリーズ、美少年シリーズが著作として挙げられています。

これらの書名やシリーズ名で著者を知っている方もいるかもしれません。今回の『備忘録』は、今日子を中心とする忘却探偵シリーズの入口。既に知っているシリーズの続巻を選ぶときとは違い、ここでは今日子と厄介、研究所の事件という、この一冊の紹介から入りやすくなっています。

作者の名前を入口にするときも、人物の名前を入口にするときも、第 1 巻という位置づけが目印になります。多くのシリーズが並ぶ著者の作品一覧の中で、今日子を知るためにどの書名から探せばよいかが明確な一冊です。

042014 年の単行本から、2018 年の文庫へ

原作の単行本は、2014 年 10 月 15 日に紙と電子書籍で発売されました。講談社は当時、本作を西尾維新さんの小説作品として初の電子書籍として発表しています。その後、2018 年 7 月 13 日に文庫版が発売されました。

文庫ページの初出欄にも、2014 年に単行本として刊行されたことが記されています。今回の商品名にある文庫版は、この刊行の流れと結び付く表記です。同じ『備忘録』を、単行本、文庫、音声と異なる形で見つけられることが分かります。

Audible の紹介には、同一内容の単行本版への注記もあります。すでに原作を持っている方には、知っている物語を音声でも選ぶかどうかを考える材料になります。

05堀江由衣さんが朗読する Audible 文庫版

今回確認した商品のナレーターは堀江由衣さん。日本語の音声で、再生時間は 8 時間 59 分、配信日は 2026 年 8 月 28 日です。原作の刊行を経て、この文庫版の音声商品が配信されたという順番になります。

形式欄の表記は完全版オーディオブック。ここで扱っているのはシリーズ第 1 巻の商品で、シリーズ全巻の収録を示す表記ではなく、単行本版の別音声商品の仕様も本記事では比較していません。

まずは公式ページのサンプルを確認してみてください。声の好みや言葉を追う速さを、自分の耳で確かめられます。利用する際は、この商品について自分のアカウントに表示される条件も確認しましょう。

06出典・確認先

講談社・単行本(人物・刊行)、講談社・文庫版(事件・初出・著者)、講談社の電子書籍化発表、Audible 文庫版(音声仕様)。確認日:2026 年 9 月 11 日。