シリーズ第2作だと知って選ぶ

『果断 隠蔽捜査2』は、『隠蔽捜査』シリーズの第2作にあたる。題名にある「2」は、同じ主人公を追うシリーズの続きであることを示している。単独の立てこもり事件だけを紹介した作品名ではないため、選ぶ前にこの位置づけを押さえておきたい。

ただし、第1作を知らなくても理解できるとは、ここでは断定できない。公式紹介から確認できるのは、竜崎が息子の不祥事を経て大森署長となり、今作の事件に向き合うことだ。前作から続く人物の経緯をどこまで先に知りたいかは、読者自身が決める確認事項になる。

シリーズを最初から追いたいなら、第1作の公式紹介も確認して順番を選べる。一方、今作の事件に関心があるなら、「大森署長となった竜崎が現場を指揮する」という現在地から検討できる。

大森署長となった竜崎の現在地

竜崎は、息子の不祥事によって大森署長となっている。ここは単なる肩書の紹介ではなく、今作で彼が担う役割を理解する手がかりだ。立てこもり事件が起きたとき、竜崎は現場から離れて成り行きを見る立場ではない。署長として現場指揮を執る側にいる。

警察小説を選ぶとき、捜査員が手がかりを集める過程に惹かれる人もいれば、責任者が情報を受け取り、方針を決める場面に関心を持つ人もいる。本作の公式紹介が前面に出すのは後者の構図だ。人質の安全が脅かされるなか、複数の立場が関わる現場で、竜崎の判断が求められる。

その経緯が事件への判断にどのような影響を与えるかは、導入だけでは分からない。選ぶ材料になるのは、個人の事情を抱えた人物が、組織の責任者として事件に向き合うことだ。

立てこもり現場でSITとSATの判断が割れる

事件の入口は、拳銃を持った強盗犯による立てこもりだ。人質が危機にある状況で、SITとSATが対立する。どちらか一方の考えに従えば済むのではなく、対応に関わる組織の間で判断が割れることが、竜崎の指揮を難しくする。

公式紹介の範囲では、両者の主張の詳細や、対立がどのように収束するかまでは明かされていない。そのため、SITとSATのどちらが正しいのかを先回りして判定する作品として紹介することはできない。注目できるのは、人質を守るという目的がある一方で、現場の進め方が一つに定まらない構図である。

立てこもり事件の行方に加えて、意見が割れたときに責任者が何を基準に決めるのかを見たいなら、竜崎と二つの部隊の間に生まれる判断の緊張が選書の軸になる。

二つの受賞歴から作品の位置づけを見る

本作は、第61回日本推理作家協会賞の長編および連作短編集部門と、第21回山本周五郎賞を受賞している。二つの受賞歴は、作品の内容を具体的に理解する代わりにはならないが、シリーズ第2作が一冊の小説としてどのような評価歴を持つかを確かめる材料になる。

受賞しているから誰にでも合う、とまでは言えない。賞の名前から朗読の出来や、初めて読む人の分かりやすさを判断することもできない。受賞歴は、事件の入口や主人公の立場とは別の客観情報として扱うのが適切だ。

『果断』は二つの文学賞を受賞した第2作である。その位置づけを確認したうえで、署長の現場判断という題材に関心が向くかを考えたい。

どの判断を追いたいかで候補を決める

『果断 隠蔽捜査2』を選ぶ軸は三つある。第一は、事情を抱えて大森署長となった竜崎の現在地。第二は、拳銃を持つ強盗犯と人質がいる立てこもり現場。第三は、SITとSATが対立するなかで、指揮官に判断が求められる構図だ。

順番を重視するなら、第1作から確認できる。今作の事件構図を重視するなら、判断が一枚岩ではない現場で、署長が責任を負う物語に惹かれるかを考えたい。

立てこもり事件の解決策を当てるだけでなく、異なる意見がぶつかる現場で、責任者がどう決断するのかを追いたいなら、本作は候補に入る。音声でミステリーを選ぶときの考え方や、利用前に確かめたい点は、Audibleでミステリーを聴く実体験ガイドでまとめている。